スズメの思い出
何年も前のことです。
アパートで独り暮らしをしていた頃、
ある朝、仕事へ出かけようと、通りに出た私の足元に、
突然、スズメが舞い降りました。
あらっ?、なんだろう?、スズメがこんなに近しくしてくれるなんて・・・
心当たりは???
と、よくよく考えてみると、
まさか、ベランダに来てるスズメ!?
ペットは飼えない、アパートの独り暮らしでした。
ともすれば、ご近所迷惑なスズメおばさん、と呼ばれかねない、
身勝手で、いけないことなのかもしれません・・・(汗)
寂しかったから、と、言い訳します。
外出の予定もなく、訪れる人もない、休日の朝は、
ベランダの手すりに米粒のせて、スズメが来てくれるのを、心待ちにしていました。
初めは電線にとまって、遠巻きに観察していたスズメたちですが、
1羽、2羽と、米粒をついばみに来てくれるようになりました。
そのうちに、私がベランダの手すりに米粒を置くのを待って、飛んでくるように
なりました。
でも、まさか、ベランダと、アパートのエントランスじゃ、東と西で反対側です・・・
同じスズメが、出勤時間を見計らって、玄関で待ち伏せするなんて、信じられません。
目の前で舞い降りたスズメは、まだ幼さの残るような可愛いスズメでした。
う~ん、可愛い!
次の再会を期待して、翌朝からは、ポケットに米粒をしのばせて、出勤です。
最初は、恐る恐る、蒔いた米粒をつついていたスズメでしたが、
回を重ねるごとに、馴れてきて、手が届きそうな位置にまで、近づいてきます。
最初の1羽から、仲間が増えて2羽、3羽になることもありました。
嬉しかったですねー! 毎朝の出勤が愉しみになりました。
なんといっても驚きだったのは、米粒をついばんでいたスズメが、
私がその場を離れると、私の傍らを飛びながら、
大通りに出るまで、後をついてきて、見送ってくれたことです。
自意識過剰! 思い過ごし! 妄想!
と、笑われても仕方ありません・・・(苦笑)
でも、あの時の私は、「スズメが私を、憶えてくれた!」そんな気がして、
しあわせな、しあわせな、気分で満たされていました。
スズメと私の、愉しい一時でした。
今でも、たいせつな思い出です。
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